研究概要 |
1.妊娠末期の母体のビタミンK状態の季節的変動について 正期産児98例について出産後6時間以内に採取した血液中のPIVKA‐IIとヘパプラスチンテスト(Hpt)を測定し,1月から3ヵ月毎に4群に分けて胎児期のビタミンK欠乏状態を検討した。PIVKA‐IIは各群間に有意差が認められなかったが,PIVKA‐II陽性例を4〜6月に1例,7〜9月に2例認めた。一方Hptは,1〜3月は43±7%(n=25),4〜6月は41±10%(n=25),7〜9月は37±10%(n=22),10〜12月は40±9%(n=26)で,1〜3月と7〜9月の群間にp=0.019の有意差が認められ,夏季に出生した児が冬季に出生した児に比して潜在的ビタミンK欠乏状態である可能性が示唆された。2.新生児期の血清中ビタミンKの動態について (1)血清中のビタミンK_1(VK_1)は臍帯血及び哺乳開始前では,著明に低値(0.007ng/ml以下)を示したが,哺乳開始とともに増加し,日令5では母乳栄養主体の群と人工栄養の群は各々0.22±0.13ng/ml,0.62±0.43ng/mlとなったが,母乳栄養主体の児では有意に低値を示した。また生後1ヵ月時においても母乳栄養児,人工栄養児ともに日令5と殆ど同様に値を示した。(2)ビタミンK_2(MK‐4)は日令0〜1では全例検出感度(5pg/ml)以下であり,日令5及び1ヵ月時でも少数例にしか検出されなかった。(3)血清中VK_1とHptとの関係については,哺乳開始後の日令0〜5においてのみ血清中VK_1が0.4ng/ml以下で有意な正の相関(r=0.61,p<0.01)が認められた。(4)早期新生児期のビタミンK最少必要量は,母乳栄養主体の児が摂取した総ビタミンK量とHptから,2μg/day前後と極めて微量であることが示唆された。3.生後1ヵ月時の母乳栄養児において,血清中ビタミンK濃度と血中総胆汁酸濃度との間にに有意な相関は認められず,血中総胆汁酸濃度がビタミンK吸収の指標にならないことが明かとなった。また血清中ビタミンK濃度及び血中総胆汁酸濃度とPIVKA‐II,Hptとの間にも有意な相関はなかった。
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