研究概要 |
Respiratory syncytial virus(RSV)感染児よりのRSV分離を試みた。分離は当研究室で継代培養されているHEp-2細胞を用いた組織培養法によって行った。患児より鼻汁を採取し,遠心分離の後上清をセミマイクロプレート上のHEp-2細胞に接種し,経時的に観察した。RSVに特微的とされる合胞体形成を伴う細胞変性効果(cytopathic effect;CPE)が現れたものを分離陽性とし,培養液を-80℃に保存した。また経時的に鼻汁を採取し保存した。平成4年度分を合わせると,現在まで,札幌市では180株あまり,小樽市でも110株あまりのRSV株を分離保存することができた。分離株のサブグループをRSV A,B株にそれぞれ特異的,およびA,B両株に反応する単クローン性抗体を用いた酵素抗体法により決定した。保存分離株を96穴のマイクロプレート上に培養されたHEp-2細胞に接種し,CPEを認めた後アセトン固定したものを抗原固相として直接用いた。一次抗体としては前述の単クローン性抗体を,二次抗体としては酵素標識抗マウスIgG抗体を用いた。その結果,札幌市におけるウイルス分離は多くは入院治療を必要とした症例よりなされたものであるが,A株が111株,B株が74株とA株が優位であった。一方,小樽市の一般開業医院にて分離された115株のうちでは,A株が48株,B株が67株とB株が優位を占めた。小樽市でのRSV分離症例は,外来治療が可能な軽症例であり,これらの結果よりRSV感染重症例にはA株が,軽症例にはB株が多いと考えられた。A,B株内の亜型の存在を明らかにするために更に検索を続行している。
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