研究概要 |
Respiratory syncytial virus(RSV)感染児よりのRSV分離を試み,札幌市では180株あまり,小樽市でも110株あまりのRSV株を分離保存することができた。分離株のサブグループをRSV A,B株にそれぞれ特異的,およびA,B両株に反応する単クローン性抗体を用いた酵素抗体法により決定した。A株が111株,B株が74株とA株が優位であった。一方,小樽市の一般開業医院にて分離された115株のうちでは,A株が48株,B株が67株とB株が優位を占めた。これらの分離株の中の,サブグループ内の亜型の存在を明らかにするため,分離ウイルスと多くの単クローン性抗体との反応性を検討し,B株が,3種類に分けられることを確認できた。また,A株の中にも,数個の変異ウイルスを確認することができた。 急性期の鼻汁よりウイルスを分離できず,酵素抗体法によりウイルス抗原を検出することで診断できたRSVの再感染と考えられる4例を確認した。これら症例の臨床症状と,初感染の児の臨床症状との間に明かな相違はなかった。 サブグループ特異的な局所免疫反応を探る目的で鼻汁中の抗RSV-IgA,抗RSV-IgG抗体を測定するTissue culture ELISA法を開発した。抗原固相作製にはRSV Long株(A株),61-48株(B株)を用いた。それにより,30名余りのA,B株感染児の鼻汁中の抗体活性を測定したが,A,B株感染のいずれの場合も,急性期の鼻汁中には抗RSV活性は検出されないが,回復期には全例に両株に対する抗RSV IgA,IgG活性が検出された。その反応は,感染サブグループに対するものが他株に対してより高く,そのことはA,B両株の場合とも統計学的に有意であり,株特異的な局所免疫反応を確認できた。
|