研究概要 |
平成4,5年度の研究で札幌市および小樽市におけるRespiratory syncycal virus(RSV)感染児よりの分離ウイルスのサブグループの決定を終了した.また,亜型の存在の検討,臨床症状,診断との関係についての検討も終了した.更にそのデータを踏まえ,サブグループ特異的な免疫反応が,感染局所に出現してくることを確認できた. 続いて,今年度は,RSVの中和エピトープを有するエンベロープ蛋白であるFusion protein(F),Large glycoprotein(G)に対する抗体反応が感染局所にどのように出現してくるか,また,その抗体反応に,既存の母体由来抗体がどのように関与してくるかについて検討した.サブグループA,B株間には特にGの抗原性に大きな変異が認められていることから,このような検討には同一のサブグループに感染した対象を用いる必要があり,よってこれまでの研究でなされたRSV感染のサブグループ決定が不可欠である.今回はA株感染児のみを対象とした.鼻汁,血清中のIgA,IgG抗体はTissue culture ELISA法により測定したが,抗原ウイルスとしてはRSV A2株のF,Gを表現しているVaccinia-RSV recombinantを用いた.その結果,鼻汁中のIgA抗体は6ヶ月未満の乳児では抗Gが抗F抗体反応より有意に高く,それ以上の年長児では抗F抗体反応が有意に高かった.また,母体由来と考えられる急性期の血清中のIgG抗体は,抗F抗体反応が主であり,その高さと,児の回復期の鼻汁中の抗F IgA抗体との間には有意な逆相関の関係が認められた.このことは,母体由来抗体が,ウイルス蛋白特異的に,児の局所IgA抗体反応を抑制すると考えられた.このことはまたワクチンの開発,治療としてのγグロブリン製剤の使用にあたり示唆に富む所見と考えられた.
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