[目的]血管障害の程度や修復機転に関与している血管内皮細胞の遊走能と、川崎病血管炎の形成に関与していると考えられている諸因子との関連性について検討した。[対象・方法]川崎病患児22例、正常対照10例について、(1)血清サイトカイン測定:IFN活性をdye-uptake法で、TNF-α、IL-1β、IL-6をELISA法で測定した。(2)抗血管内皮細胞抗体(AECA)をELISA変法で測定した。(3)血管内皮細胞遊走能:対象血清および各種サイトカイン、ウサギ由来AECAに対するヒト臍帯由来の培養血管内皮細胞(EC)の遊走をmodified Boyden chamber法により測定した。[結果](1)血清サイトカイン:患者群:IFN活性、INF-α、IL-1β、IL-6値は急性期に上昇し、ガンマグロブリン大量療法(IVGG)後に著明に減少、発症1カ月以降ではほとんどの例で検出限界以下となっていた。正常対照ではいずれのサイトカインも検出限界以下であった。(2)AECA:患者急性期血清で上昇が認められた。(3)EC遊走能:a)患者群血清に対する遊走能は急性期で、正常対照より有為に上昇していた(p<0.05)。これは抗IFN-γ抗体によって抑制された。しかし、IVGG後には著しく低下し、遠隔期でも正常対照との間に有為差はなかった。b)IFN-γ、TNF-α、IL-1β、およびIL-6の単独使用ではTNF-αを除き濃度依存性にECの遊走能は高められた。c)ウサギAECAにもEC遊走能亢進作用が認められた。d)ガンマグロブリンの単独使用では濃度依存性にECの遊走能は抑制された。[まとめ]川崎病急性期の血管内皮細胞遊走能の上昇にサイトカインやAECAが関与しており、それらはIVGGにより直接的、間接的に抑制されていることが示唆された。
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