1.赤芽球のα-tubulin:臍帯血の単核球、およびcongenital erythropoietic anemia type III(CDA III)患児の末梢血単核球の低酸素培養によって得られる赤芽球のα-tubulinをモノクローナル抗体を用いて染色し、その細胞内分布を比較した。CDA III赤芽球では、細胞表面にみられる刺突起および棍棒状突起に、α-tubulinが多く存在することが、臍帯血由来の正常赤芽球と比較して目立つ特徴であった。また、細胞表面の点としてα-tubulinが証明されることもCDA III赤芽球にみられた。刺突起および細胞表面の点のα-tubulinは、細胞分裂後のintercellular bridgeの遺残物の可能性があるが、一方、細胞表面から樹枝状にα-tubulin陽性の糸状突起が出ているものもあり、顕微鏡映画によって観察されたCDA III赤芽球の盛んな細胞突起放出が、このようなα-tubulinに富む突起の多さとして観察されるものとなっていることが推測される。多核あるいは分葉核を持つCDA III赤芽球でのα-tubulinについては、とくに増量や分布の異常は証明されなかった。 2.赤芽球のcyclin:低酸素培養によって得た正常およびCDA III赤芽球について、cyclinの1種であるproliferating cell nuclear antigen(PCNA)をモノクローナル抗体を用い、propidium iodideとの二重染色でFACSを使って、DNA量、細胞周期との関連させて測定した。正常赤芽球では、PCNAは2C期で低値で、S期に入って漸増し、G_2(4C)期で最高となる。CDA III赤芽球では4C以上のDNA量の細胞が少数ながら存在するが、そのPCNA量はDNA量と平行して多い傾向が認められた。この所見の意義は、さらに検討を要する点である。計画では、さらに後天性のdyserythropoiesis赤芽球についても検討に進む予定であったが、panningによる赤芽球の単離方法等の検討に予期以上の時間を要したため、実施できなかった。
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