補助金交付の期間における研究において以下のような知見が得られた。 1.十分なる説明により本研究の目的を理解して参加を希望した血縁者間骨髄移植のドナーに対して移植直前に水痘ワクチンを接種した。 2.レシピエントにおける帯状疱疹発症の有無 ドナーに水痘ワクチンを接種した26例のレシピエント中11例において移植後47〜245日に帯状疱疹の発症を認めた。Kaplan-Meier法による発症率は45.3%であった。ワクチン非接種対照群(39例)の帯状疱疹発症率90.6%と比較して、P<0.01の危険率にて有意の差であった。 3.ドナーにおけるVZV特異的リンパ球幼若化反応 ワクチン接種前後でのVZV特異的リンパ球幼若化反応変化は一定した傾向はなく、上昇することも下降することもあった。また、患者での移植後の帯状疱疹発症の有無とドナーにおけるVZV特異的リンパ球幼若化反応の上昇あるいは下降との間に相関はなかった。 4.レシピエントにおけるVZV特異的リンパ球幼若化反応 帯状疱疹を発症した症例でのVZV特異的リンパ球幼若化反応は、移植後3カ月までにSI値が3.0以下になり、帯状疱疹発症後に再陽転していた。これに対し、帯状疱疹をまだ発症していない症例の多くはSI値が3.0以上を維持しており、6カ月を経過した症例では10以上のSI値に復帰していた。 今回の我々の成績は、骨髄ドナーに移植直前に水痘ワクチンを接種することにより、約半数のレシピエントに感染防御に十分なVZV特異的Tリンパ球メモリーを伝達しうることを証明した。しかしながら、残りの半数では従来のワクチン非接種例と同様に帯状疱疹を発症したことから、すべての症例で十分なメモリーTリンパ球の維持ができる訳ではないことを意味している。
|