研究概要 |
気管支喘息は種々の化学的、物理的誘因により一過性の気道過敏症であるが、その重症化の機序は多様である。気道内では炎症反応が起こっており、種々の炎症性サイトカイン、顆粒球などが複雑に絡み合って病態を装飾している。気管支喘息において、好中球など炎症性顆粒球と細胞接着がどの様に発作や重症化に関与しているかを明らかにし、重症化の予知、予防法を探ることを目的とした。方法は承諾の得られた気管支喘息患者および対照として気管支分岐異常者から全身麻酔下で気管支ファイバースコープを挿入、微温生食水を注入、軽く圧をかけてから吸引回収した気管支洗浄液(BALF)をガーゼメッシュを通して遠心、BALF細胞を得た。接着分子の発現はそれに対する単クローン抗体を用いてフローサイトメトリーで、走化能は膜フィルター法で、活性酸素はシトクロム還元法でそれぞれ測定した。その結果、1.気管支喘息患者では、BALF中の細胞数は約2倍、特に好中球は約4分の1を占め、増加が目立った。2.BALF細胞は、対照に比べ、接着分子CD11a(LFA-1),CDllb(CR3),CD18(β-chain of CD11)の発現が増強していた。これは個々の細胞の蛍光強度の増強ばかりでなく、陽性細胞数も増加した。発作の重い程その増強は強かった。BALF細胞の付着能、走化能、貧食能は、対照の1.5〜2倍に亢進していた。刺激による活性酸素の生成は細胞浮遊状態では対照と差がなかったが、気管上皮細胞に付着させると約2倍に増加した。無刺激は殆ど活性酸素を生成しないが、上皮細胞に付着させるとそれだけで生成が認められた。喘息発作のない時期ではこういう現象は見られなかった。以上から、非発作時の気管支喘息患者のBALF細胞は対照と変わりなく、発作後のBALF細胞には機能亢進、接着分子の発現増強、活性酸素生成が見られることから、細胞接着を制御すると喘息の重症化は予防できるものと思われる。
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