研究概要 |
1.本邦症例における異常遺伝子の同定:優性栄養障害型の1家系について,VII型コラーゲン遺伝子における制限酵素PvuIIおよびAluI多型を用いて疾患との連鎖を検索した。その結果,VIIコラーゲン遺伝子と表現型の間で最大ロッド値2.10(組み換え率0)が得られた。また,Dowling-Meara型単純型表皮水疱症において,ケラチンK14遺伝子のロッド領域をコードする部分で,ArgからCysへのアミノ酸を伴う点突然変異を発見した。 2.基底膜構成成分の遺伝子構造およびその発現:接合部型の病因遺伝子,あるいは発症病理検索のために必要な基底膜の構成成分であるIV型コラーゲン,ラミニン,類天疱瘡抗原の遺伝子発見を,表皮角化細胞ならびに線維芽細胞を使用して検索した。その結果,それらのmRNAは両者の細胞で発現すること,また極く微量のmRNA検出にはpolymerase chain reaction法が有用であった。このことは,患者の遺伝子異常検索には線維芽細胞も利用可能であることを示している。またマウス類天疱瘡抗原遺伝子の5'末端側構造の決定も行った。 3.栄養障害型の病態におけるマトリックス分解酵素の関与:劣性および優性栄養障害型患者由来線維芽細胞におけるcollagenase,stromelysinの遺伝子発現を検索した。その結果,劣性型では明らかにそれらの発現が種々の程度に上昇しており、しかもそれらは必ずしも協調的には調節されていなかった。これらは転写活性の段階での制御異常であることが示唆されたが,これらの結果は本症における水疱形成およびその後の組織修復過程において,マトリックス分解酵素が重要な役割を果たしていることを示している。
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