研究概要 |
皮膚からの真皮微小血管内皮細胞の単離,長期培養は,その材料の供給上の問題から十分な成果を得られなかった。しかし,ヒトさい帯静脈からの血管内皮細胞の確保は、培養液の組成の改造(M-199培地に2%FCS、EGF,FGF,ハイドロコチゾンなどを添加する。)もあって無菌的に長期の維持が可能となった。このため遺伝子レベルの実験にも必要な量の確保ができるようになった。血管内皮細胞のマトリゲル上での培養にコンピューター画像解析を組み合わせて行なう血管新生のin vitroでの定量化の確立はほぼ確立した。今年度の研究では細胞外マトリックスに対するレセプターである各種インテグリンの影響について検討し、血管内皮細胞の管腔形成に対してVLA-2の著明な抑制作用(70%)を,またVLA-4,-6では20〜30%の抑制効果を認めた。また血管内皮細胞をマトリゲルの中で培養すると、24時間後に血管内皮細胞が網目構造を呈したり、個々の血管内皮細胞質に管腔形成を認めた。この現象は血管内皮細胞に特異的で、血管内皮細胞の分化能の一つの表現型と考えている。次に皮膚からの肥満細胞の単離に関しては、その技術はほぼ確立されたと考える(1gの皮膚から10^<x6>個ほど回収された。)しかし、その無菌的長期培養法に関してはまだ不備な点も多く、そのため長期培養時における形態、機能変化の観察や、各種サイトカイン刺激によるHLA-DRなどの新規誘導も確認できなかった。しかし得られた皮膚肥満細胞のサイトスピン標本を作成して免疫組織染色を施行することにより、皮膚由来の肥満細胞には各種インテグリン、細胞接着因子、クラスI抗原、白血球マーカーなどの存在がが確認された。そのほか高親和性IgEレセプターの存在も確認され、今後は皮膚肥満細胞のヒスタミン遊離能に及ぼす高親和性IgEレセプターの関与も検討したい。
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