表皮水疱症は大別して先天性表皮水疱症と後天性表皮水疱症に分けることができる。いずれの場合も発症の主役となるのは、アンカリングフィブリルの主要構成タンパクである7型コラーゲンである。後天性表皮水疱症では、7型コーラゲンに対する自己抗体が生じ、この自己抗体が7型コラーゲンの機能を阻害する結果、細胞-細胞外マトリクスの接着性が障害され、表皮水疱が形成されると考えられている。したがって、我々は7型コラーゲンの構造を明かにすることを目的として、平成4年度には、ヒト培養表皮細胞全mRNAに対応するcDNAを作製し、本タンパクをコードするcDNAの単離を行った。はじめに単離されたcDNAは全長約1kbで、また本cDNAをプローブとして用いてノザンブロット法を施行すると約9.5kbの単一のバンドを示すことから、全体のおよそ10分の一に相当すると考えた。このcDNAをプローブとし、cDNAライブラリーを再スクリーニングすることにより、複数の、互いに重複するクローンを得た。平成5年度は、これらの重複するクローンにより7型コラーゲン非コラーゲン領域をほぼカバーすることができたので、塩基配列に基づいて、アミノ酸配列を決定し、構造解析を行った。その結果7型コラーゲンN末側非コラーゲン領域は次の特徴を持つ事がわかった。1.中央部分はフィブロネクチンタイプIIIリピートと相同性を持つ。2.更に、その部分は内部に9個の繰り返し構造を持ち、この繰り返し構造の各々の相同性は、フィブロネクチンタイプIIIリピート内の繰り返し構造の各々の相同性とよく類似する。以上のことより、本タンパクとフィブロネクチンは、一次構造に相同性があるのみならず、高次構造も類似している可能性が高い。このことは、7型コラーゲンN末側非コラーゲン領域が他の高分子タンパクと相互作用を持つ可能性を強く示唆するものである。
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