Vitamin D_3を培養表皮ケラチノサイトの培養上清に添加し、細胞周期のどの時期の細胞が増加するかを検討した。その結果、S期が減少し、G1期とG2+M期も増加していることが明かになった。次に、c-MycプロトオンコジーンmRNAの発現を検討したところ、添加後3時間後には、著明に減少した。Retinoblastoma gene productは癌抑制遺伝子として分離されたが、その後細胞のG1期からS期への移行に重要な役割を果たしていることが明かになった。即ち、脱リン酸化Retinoblastoma gene productがG1期からS期への移行を抑制し、細胞増殖を抑制する。そこで、Western blot法を用いて、Vitamin D_3のRetinoblastoma gene productに対する影響を検討した所、脱リン酸化Retinoblastoma gene productはVitamin D_3添加前では20〜30%であったが、添加後48時間後ではほぼ100%になっていた。さらに、SV40ウイルスにて形質転換した表皮ケラチノサイト(Retinoblastoma gene productが作用しなくなった細胞)を用いて、Vitamin D_3の表皮ケラチノサイトに対する増殖抑制効果をみたところ、10^<-6>Mの濃度で正常表皮ケラチノサイトは90%以上抑制されたが、SV40ウイルスにて形質転換した表皮ケラチノサイトは増殖抑制は10%以下であった。これは、Vitamin D_3の表皮ケラチノサイトの増殖抑制作用にRetinoblastoma gene productが関与することを示している。 次に、Vitamin D_3の表皮ケラチノサイトの分化に対する影響を検討した。分化のマーカーとして、インボルクリン陽性細胞数をFlow cytometryにて測定した。その結果、10^<-6>Mの濃度でインボルクリン陽性細胞数がコントロールより2ないし3倍に増加し表皮ケラチノサイトの分化を促進することが明かになった。次に、Vitamin D_3レセプターの局在をモノクローナル抗体を用いて免疫組織学的に検討した。その結果、正常表皮では基底細胞層に、尋常性乾癬病病変部では表皮全層にわたってみとめられ、細胞における局在はいずれも核であった。
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