研究概要 |
皮膚型ATL(c-ATL)と菌状息肉症(MF)とは臨床的にも病理組織学的にも極めて類似している。しかもその腫瘍細胞の表面形質もともにCD4(] SY.sym.+[),CD8(] SY.horizontally divided circle.-[)の末梢成熟T細胞のそれを示す。両者の決定的な相異はHTLV-Iのmonoclonal integrationが認められるかどうかにかかっている。近年HTLV-1のpXgeneによりコードされるP40^<tax>がIL-2Rの転写を亢進させることが判明し、HTLV-1のintegrationが認められるT細胞において、IL-2・IL-2R系によるT cell growthの亢進が示唆された。我々はこの点に着目し、c-ATLおよびMF間に1L-2Rレベルでの相異がないかどうかを検討した。まず両者を比較する為、MFをeary stageであるplaque groupとadvanced stageであるtumor groupとに分けた。又c-ATLではその予後より鑑み、比較的予後良好なnon-tumor group(erythema,papulesなど)と、予後不良なtumor groupとに分けた。各グループ間におけるIL-2Rレベルを検討し、以下の結果を得た。 1)ELISAにより血清中の可溶性IL-2Rαを測定したところ、c-ATLではtumor groupが17,200U/ml、non-tumor groupが2,900U/mlであり、MFではtumor groupが2,700U/ml、plaque groupが500U/mlとc-ATLが有意に高値を示した。 2)皮膚病変部の浸潤細胞のうちIL-2Rα陽性細胞の占める割合はc-ATLではtumor groupが62%、non tumor groupが36%であり、MFではtumor groupが5.8%、plaque groupが14.2%とc-ATLで高値が認められた。さらに皮膚病変部でIL-2Rα陽性細胞の割合が高いもの程、可溶性IL-2Rが高値を示す傾向があり、両者には正の相関が認められた。 3)c-ATLの皮膚病変部とMFのそれにおけるIL-2Rα・mRNAの発現をRF PCRで検討したところ、c-ATLにおいてより高値を示した。以上の結果より、IL-2Rαレベルにおいて両者間にはかなりの相異が認められた。近年、ATLの腫瘍化機序について、IL-2・IL-2R系にオートクライン・パラクラインによる増殖過程を経て腫瘍化へと進行する可能性が考えられているが、今回の結果より考えると、両者の腫瘍化機序は異なっている可能性が示唆された。
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