水疱性類天疱瘡は、表皮基底膜成分に対する自己抗体が血清中に出現する水疱性疾患であるが、近年そのうちの二種の抗原の構造があきらかにされた。いっぽう我々は水疱性類天疱瘡のある患者血清中には、これらとは異なる450kD抗原を認識する抗体が存在することを発見したが(J.Dermatol.1992)、その分子の構造は明らかでない。今回我々は分子生物学的手法を用いてこの抗原決定基の分子構造を解明したので、報告する。まず450kD抗原を認識する患者血清を用いて、ヒト表皮細胞由来のcDNAライブラリー約200万個をスクリーニングし、この抗原をコードするクローンを1個単離した。この単離クローンが実際この抗原をコードすることは以下の3通りの証拠、即ち(1)単離クローンを大腸菌Y1089に感染させて発現させた融合蛋白質に患者血清がイムのブロットで反応したこと、(2)融合蛋白質に吸着される患者血清成分が450kD抗原と反応したこと。(3)融合蛋白質を家兎に免疫して作製したポリクローナル抗体が450kD抗原と反応したことで確認した。 単離クローンの挿入部位を^<32>Pで標識し、この抗原を発現するHO-1-u-1(ヒト口腔底発生扁平上皮癌由来)細胞のmRNAを用いてノーザンハイ ブリダイゼイションを実施したところ、約12‐14KbpのmRNAとハイブリダイズした。挿入部位は276bpのopen reading frameを有し、推定のアミノ酸配列からは現在まで報告のある物質とのホモロジーは認められず新物質と同定された。
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