一昨年度および昨年度の研究の結果、我々は膠原病における血清抗ユ-ビキチン抗体の存在が特にSLEにおいて高い頻度で検出されることを明らかにした。また免疫組織化学的にSLE、DLE、subacute LEにおいて、表皮細胞がユ-ビキチンを発現することも明らかにした、これらの結果を踏まえて、今年度は免疫組織化学の対象を自己免疫水疱症や非炎症生皮膚疾患に広げて検討した。その結果、水疱性類天疱瘡、尋常性天疱瘡および乾癬においても表皮細胞がユ-ビキチンを強く発現していることが明らかとなった。しかし、母斑細胞母斑や強皮症の硬化性皮膚病変などでは弱い染色を表皮に認めるものの、正常皮膚と比較して有意な差を認めなかった。以上の結果から、ユ-ビキチンは、表皮細胞が非特異的な炎症性の刺激をうけて、発現する可能性が示唆された。このような現象は、膠原病の皮膚病変に限らず、表皮細胞がさまざまな刺激を受けた時にユ-ビキチンを発現するものと考えられた。また、膠原病の皮膚病変においても、強皮症の硬化性病変のように細胞浸潤が乏しく、炎症性変化が軽度であるものでは、表皮細胞にユ-ビキチンの発現をみないことは新知見であった。これらの結果から、ユ-ビキチンに対する自己抗体の存在は、エリテマトーデスの病態においては原因ではなく、表皮細胞がユ-ビキチンを発現した結果として、二次的に抗体が産生されている可能性が示唆された。本研究では膠原病の皮膚病変と抗ユ-ビキチン抗体との関係を検討してきたが、今後は内蔵臓器における発現等を解析することにより、病勢や臓器障害も程度の判定に役立つ可能性があるものと考えられる。
|