初年度はSLE患者血清中の抗ユ-ビキチン抗体の存在の検討を行ない、約70%の患者に血清抗体価の上昇を認めた。皮膚症状としてリベド、内蔵臓器症状としてはCNSルーブスを伴う症例に抗体価の上昇を高頻度で認めた。次に抗ユ-ビキチン抗体を用いてSLE患者の皮膚病変局所における、ユ-ビキチンの発現を検討した。正常皮膚では表皮細胞の細胞質に細顆粒状の非常に弱い陽性所見を認めたのに対し、SLE、亜急性エリテマトーデス、DLEを含めたエリテマトーデス患者37例のうち、29例の表皮に細顆粒状からびまん性の強い陽性所見を認めた。エリテマトーデスのサブグループ間では、出現頻度の差は認めなかった。次年度は主にエリテマトーデス以外の膠原病に関しての検討を行った。その結果強皮症においては約30%の症例に抗ユ-ビキチン抗体価の上昇を認めた。これはコントロール群と比較して高価であるが、SLEと比較すると低値であった。最終年度では免疫組織化学的アプローチで自己免疫水疱症などを検討した。その結果、水疱性類天疱瘡、異常性天疱瘡および乾癬においても表皮細胞がユ-ビキチンを強く発現していた。また、虫刺症による水疱や痒疹においても同様であった。しかし、母斑細胞母斑や強皮症皮膚病変においては陰性であった。以上の結果から、ユ-ビキチンは細胞が種々の刺激をうけて、炎症性変化をきたした場合に発現するひとが示唆された。この炎症は、膠原病に限らず、非特異的刺激でも同様の反応が惹起されることが示唆された。ユ-ビキチンに対する自己抗体はエリテマトーデスの病態においては原因ではなく、炎症によるユ-ビキチンの発現の結果として、二次的に抗体が産生されている可能性が示唆された。今回は皮膚病変との係わりに関する検討が主体であったが、内蔵臓器における発現等を解析することにより、今後は病態への関与と病勢や臓器障害の程度の判定に役立つ可能性が考えられる。
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