皮膚科領域では、種々のあざの治療にレーザーが使用されたことがあるが、ケロイド等の副作用の発生が多く認められ、必ずしも有用との評価を得ていない。しかし、近年selective photothermolysisというレーザー療法の治療指針が提唱され、瘢痕を残すことなく色素性皮膚病変を治療しうることが指摘された。我々は、この理論が正しいことを種々の動物実験で確認したので、実際にヒトにおける種々の色素性皮膚病変をselective photothermolysisの条件をみたすQ-swiched ruby laser(波長:694nm、照射時間:30x10^<-9秒>)で治療した。その結果、いままで有効な治療法がなかった大田母斑は、すでに100例以上の症例を治療し、有効率はほぼ100%との結論に至った。その他の色素性病変は、症例も少ないためはっきりした結果を得ていないが、以下のことがいえるのではないかと思われる。つまり、入れ墨はこのレーザー光線を吸収する青から茶、黒の場合は全例有効で、また、腫瘍性のメラノサイトの増殖による皮膚病変である色素性母斑や青色母斑も病変があまり深部に存在しないかぎり、徐々に色調は薄くなり、また隆起した病変も偏平化してくる。しかし、メラニンが表皮内のみに増加するepidermal melanosisに対しては、照射後2から4週間後に色が濃くなる場合もあり、必ずも有用とは言えなかった。特に肝斑では全例無効であった。しかし、偏平母斑では、再発が見られるものの、約半数は有効で、レーザー照射の繰り返しによりほぼ色素病変は、認められなくなった。
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