接触皮膚炎の発症のメカニズムを検討する中で遅延型過敏症を著明に抑制するサイトカインNSFを見いだした。NSFは低分子感作性物質(ハプテン)で刺激したマウスの脾臓に誘導される抑制性細胞から産生される分子量56kDaの蛋白質である。NSFは脾臓のサイクロフォスファマイド感受性で、Ia抗原陽性マクロファージ(介助細胞)に吸着し抑制性細胞(介助細胞)に変化させるというユニークな作用を持つ。この細胞は皮膚由来のランゲルハンス(LC)細胞と共通性が高い。このようにLC細胞がNSFの標的細胞の一つである可能性があるため本研究ではLC細胞に及ぼすNSFの作用を検討した。ハプテン(FITC)塗布によってハプテン化され、活性化されて領域リンパ節に流入したLC細胞はハプテン化樹枝状細胞(FITC-DC)として検出される。この系を用いて次の結果を得た。 (1)リンパ節細胞はNSFを吸着するが、33D1抗体(DC細胞を認識する)で精製した結果NSFに対するレセプターを持つ細胞はDCないしはFITC-DCであった。 (2)NSFはFITC-DCの遅延型過敏症誘導能(抗原提示能)を抑制した。 (3)リンパ節細胞やFITC-DCはNSF処理によって抑制性細胞に変化することはなかった。すなわち、即ち抗原提示能や遅延型過敏症の発現を阻止しなかった。 一方、NSF処理脾細胞は抗原提示能も遅延型過敏症の発現も抑制した。 (4)FITC-DCの抗原提示能及びNSFに対する感受性はサイクロフォスファマイドに抵抗性であった。 以上の結果から、皮膚由来のランゲルハンス細胞は脾臓の介助細胞と同様にNSFに対するレセプターを持ちNSFの標的細胞の一つあると考えられるが、LC細胞の抗原提示能の抑制と介助細胞への変化は異なった現象で、異なった抑制回路で起こっていると考えられる。
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