FDG法による、正常若年ボランティアの閉眼安静臥床時及び開眼視覚刺激時に於ける、脳ブドウ糖代謝の測定・解析が行われた。既に知られている後頭葉一次視覚野での局所脳ブドウ糖消費率の亢進と言う変化のみならず、刺激・賦活による速度定数の変化の抽出も可能と思われる結果が得られた。これは、賦活による脳ブドウ糖代謝の亢進の機構を知る上でも、重要な知見と思われる。又、単純な数値計算を負荷する事により、前頭葉に高いRI集積が見られ脳の活動の抽出が示唆された。老年ボランティア・痴呆症状を持つ老年被検者・痴呆と同様の脳血流の全般的な低下を見ながら痴呆を持たない老年被検者の閉眼安静臥床時に於ける脳ブドウ糖代謝の測定も行われ、脳ブドウ糖代謝消費率や速度定数等のパラメータの加齢による変化の抽出・解析が進められている。正常の加齢変化と痴呆との鑑別に役立つものと思われる。更にこれらのPET検査より、動脈採血とオートラジオグラフィ法による定量画像の解析・簡略化の検討が行われた。平均標準化された血中時間RI濃度曲線を実際のRI濃度2点で補正する事により、頻回の動脈採血を省略しても、それとほぼ同等の局所脳ブドウ糖消費率の算定が可能という結果を得た。これは、検者・被検者の負担の軽減や、真の負荷試験の確立の為に役立つ新たな知見と思われる。^<15>O-CO_2持続吸入法では、開眼による視覚刺激、臭い物質静注による嗅覚刺激、食塩水による味覚刺激試験による脳局所の賦活部位の抽出が行われた。視覚刺激により、後頭葉一次視覚野の活動が抽出され本法の妥当性が示された。味覚・嗅覚刺激により、大脳辺縁系の有意の脳血流の増加が見いだされ、これらの部位の賦活が示唆された。これは、嗅覚・味覚刺激による脳の賦活を抽出した初の知見であり、痴呆症と関連の深いこれら部位の変化検出の可能性を示唆するものである。
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