(1)ファントム及び動物(兎)を用いた実験を行った。また陽子線治療患者から発生する音響パルスを実測した。X線コンピュータ断層像を用いたコンピュタ・シミュレーションにより治療計画から理論的に予想される音響パルスの信号波形を計算し、ファントム実験の結果とほぼ一致すること及び患者さんからの音響パルス信号と定性的に一致することを確認した。なお兎や患者さんからの信号測定は世界で初めてと思われる。 (2)牛の骨を水中で用いた実験を行い、音響パルスは周波数が低いので約1cmの骨を透過することを実験的に確認した。この実験は頭蓋骨に囲まれた、脳の動靜脈奇形の陽子線による治療への応用では特に大切と思われる。 (3)音響パルス発生の中性子捕捉療法への応用に付いて調査及び考察を行った。この結果パルス中性子源でも熱中性子では分解能が出ないため、パルス熱外中性子を用い、インジウム等の共鳴吸収を行う物質を併用することが必要であることが分かった。 (4)実際の臨床応用では3次元状の線量分布であるので、発生した音響パルスを平面状に並んだ多数の水中マイクロフォンで検出し、これからパルス放射線入射の際に生じた圧力分布(これは線量分布に比例する)を計算することが必要である。このためには境界値問題を解くことが必要であることが分かっている。 コンピューターシミュレーションを行いある程度の結果を得た。
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