放射線医領領域において、電子線は表在性あるいは浅在性の腫瘍の治療に用いられ重要な役割を果している。今回は、この電子線の線量分布について、末梢リンパ球の染色体に生じた異常頻度を用いて分析した。放射線の照射は全血をプラスチック試験管に入れ、ファントム中にて実施した。線量は原則として0.5から4.0Gyとしたが、0.3や6.0Gy照射した例もある。培養は37.0℃にて45時間行った。分析対象の染色体異常は2動原体染色体および環状染色体とした。 14MeVの電子線照射の場合、これらの染色体異常誘発は^<60>Co-γ線のそれと比較し、ほぼ同等の線量効果関係を示した。しかし、染色体異常頻度で示された深部線量分布は物理的測定による線量分布と比較すると若干の差異が認められ、染色体異常の最高頻度の位置はやや深部へずれる傾向が示唆された。 16MeV電子線による深部線量分布のピーク近傍(99%)位置での同様の照射による結果も^<60>Co-γ線照射によるものと大きな差を認めなかった。 次に、照射時、血液にヨード系造影剤をヨードの含有量にて3.5%添加した場合について調べた。その結果、深部線量分布のピーク位置における照射では、ヨードの添加の有無にかかわらず、誘発された染色体異常頻度に差を認めなかった。ただし、ピーク位置より浅いところではヨードの添加による異常頻度誘発の増加傾向が認められた。次年度は、無酸素〜低酸素状態における電子線による染色体異常誘発について分析する予定である。
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