研究概要 |
悪性腫瘍の放射線治療を実施する場合,X線あるいは電子線のエネルギーを切り換えて行う場合が多い。このエネルギー切り換えは,放射線発生装置の操作卓上の切り換え用プッシュボタンあるいはキーボードから必要なエネルギーの数値を入力することによって行われる。医療用電子加速装置の使用者として最も不安なことは,選択したエネルギーのX線あるいは電子線が,はたして安定して発生しているのであろうか,ということである。日本医学放射線学会ではX線および電子線エネルギー標準測定法として,水中での深部率曲線から評価することを推奨している。しかしこの方法は非常に手間がかかり,頻回行うわけにはいかない。 この研究の目的は,照射中リアルタイムでX線あるいは電子線のエネルギー解析が可能な機能を有する装置の開発である。検出器にはパルス電〓箱を試作し,金属フィルターと組み合せ,医療用電子加速装置の放射口に取り付けた。電〓箱からのパルス信号をリニアアンプにより増幅し,パルス波形をオシロスコープでモニタすると同時に,多重波高分析器(PHA)によりスペクトル解析を行った。解析結果はパーソナルコンピュータにより処理し記録した。医療用電子加速装置は,メバトロン77(東芝製)およびマイクロトロン-HTM-2200(日立製)を使用した。PHAに記録されたスペクトル波形のピークの位置は,放射線のエネルギーの上昇につれ,高チャンネル方向へほぼ直線的に移行した。従って,この方法によるエネルギー弁別は可能であることが分った。ただし,電子加速器に流れる電流値依存性があり,これを金属フィルタとの組み合わせにより解決した。このエネルギー解析装置は,X線あるいは電子線のエネルギーの絶対値を知ることはできない。前記の日本医学放射線学会評準測定法と照合し,PHAのスペクトル波形のピークの位置関係を対応させることにより,照射中でも利用可能である。
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