研究概要 |
目的:老齢化社会を迎えて,骨粗鬆症の診断及び治療に対する重要性が高まっている.その病態には骨量の減少に加えて骨基質成分の変化も関与しているため,骨基質の変化を評価することが重要である.現時点では生体内の骨基質を無侵襲に評価する方法はない.前回までの検討では,MRIの新しい撮像法であるchemical fat saturation法(FS法)は,骨基質の評価に役立つ可能性があることがわかった.今年度の研究目的は実験の継続及び臨床例において,本法が骨粗鬆症の診断に有用かどうかを検討することにある.対象および方法:実験対象としては前回作成したと同様の骨粗鬆症モデル兎を,臨床例として思春期,成熟期,閉経後の各年齢層の女性を対象とした。MRI装置は人体用の1.5T超伝導装置を使用し,スピンエコー法及びFS法のT1強調像(T1WI)、T2強調像(T2WI)を撮像した。各パルス系列で腰椎の信号強度を測定し,同時にT1値,T2値を得た.またX線CTを用いて兎,人体椎体の骨塩量を求めた.結果:実験的検討では骨粗鬆症群と対照群の間には,T1WI,T2WI共に差がなかったが,FS法では有意の差を認めた.定量的検討ではFS法のT2値は骨粗鬆症は対照群に比べ有意に短縮していた.人体の検討ではFS法の信号強度は加齢により低下し,加齢によりT1値延長とT2値が短縮していることがわかった.骨塩量は兎,人体共に各群間に優位の差を認めなかった.考察および結論:骨粗鬆症における骨基質有機成分,特にコラーゲンの変化としては溶解性の変化,アミノ酸組成の変化,分子間架橋の変化等がある.MRIではFS法での信号強度だけがこれらの変化をよく反映していた.特に骨粗鬆症の骨基質の変化を定量的に診断する上でFS法を併用したT2強調像が最も適していた.CT値は各群に有意差を認めなかった点から,MRIはCTよりも早期に骨粗鬆症性変化を捉えることができる可能性がある.
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