研究概要 |
放射線大腸炎の病因を解明するため放射線照射を受けた症例に於ける血管内皮に対する接着分子の発現を検討した。 方法は、子宮頚癌で骨盤内に放射照射を受けた症例に大腸内視鏡検査を行いその粘膜所見を参考にし、直腸粘膜及び下行結腸もしくは横行結腸の生検を行った。生検組織を直ちに凍結し、凍結切片を作成した。血管内皮に存在する接着分子に対する単クローン抗体(ELAM-1,VCAM-1,ICAM-1)およびコントロール抗体(HCGに対する抗体)を用いて免疫組織染色を行った。現在までに行った症例は、照射終了後6カ月以内の症例であるが、ELAM-1,VCAM-1の発現は認められなかった。ICAM-1は正常大腸粘膜にもある程度発現されていたが、照射後の粘膜に発現が増加していた。 この結果より、現在我々は、ICAM-1の放射線大腸炎への関与を考えている。すなわち、ELAM-1やVCAM-1は炎症の極期に発現され、白血球やマクロファージの炎症巣へのリクルートに関与するものと言われており、ICAM-1は炎症と免疫(リンパ球)に関与するものと言われている。ICAM-1のみが、初期の変化(臨床的潜伏期)に関与している可能性から、放射線大腸炎に於ける免疫機構の関与を考えている。現時点で、症例数が6例である。症例数が少ない点および明かな放射線大腸炎の症例がまだ検討されていない点が問題と考えられる。次年度では、症例数を増やすと共に臨床症状のある症例も検討する予定である。
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