ヒストンH2Bを認識するヒト型モノクローナル抗肺癌抗体HB4C5の腫瘍特異性を明確にする事を目的とし、下記の実験を行い、以下の結果を得た。 1)コントロールとして、ヒトIgMの腫瘍内分布をマクロ及びミクロオートラジオグラフィ(ARG)にて確認し、HB4C5の分布と比較。 1-125標識ヒトIgMの移植肺癌(LC6)への集積はマクロARGではバックグランドと同程度となり、腫瘍への明らかな高集積は見られなかった。ミクロARGではヒトIgMの腫瘍内分布は非特異的で、血流の多い部位に銀粒子の沈着が多く認められた。 2)HB4C5の腫瘍細胞内集積の特異性の検討;ミクロオートラジオグラフィで観察されたHB4C5の核内の分布が肺癌(LC6)に特異的かどうか、肝臓その他の臓器のミクロオートラジオグラムを作成して観察。マウスの肝臓、脾臓、そして肺のミクロARGであ、1-125標識HB4C5の明らかな集積像は認められなかった。 3)肺癌(扁平上皮癌LC6)以外のヒト悪性腫瘍を移植した担癌マウスを用い、HB4C5を投与して体内及び腫瘍内分布を確認。 ヒト由来の結腸癌(印環細胞癌)、結腸癌(腺癌)、肺癌(大細胞癌)を移植したマウス各2匹に1-125標識HB4C5を投与し、全身のマクロARGを作成して腫瘍への集積を観察した。部分的ではあるが肺癌(大細胞癌)、結腸癌(腺癌)へのHB4C5の集積が見られ、HB4C5の抗原と考えられるヒストンH2Bのこれら悪性腫瘍における存在が示唆された。 以上の結果からHB4C5のARGで確認された細胞内の、特に核周囲および核内の銀粒子の塊状沈着はヒトIgMでは見られず、肺癌(扁平上皮癌LC6)のヒストンH2Bを特異的に認識した結果と推定された。
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