研究概要 |
近年,イメージングの開発は進み,そのうちのひとつであるMRSを用いて,受容体刺激による二次メッセンジャーの反応をin vivoで捉えることが可能になってきている。しかし,まだ様々な問題があるため,ヒトを対象にした研究には至っていない。本研究では,躁うつ病のセロトニン受容体過感受性仮説に基づいた動物モデルを作成し,これを対象にセロトニン受容体を刺激した場合に生じるPi反応の亢進を^<31>P-MRSのPMEピークの変化量として捉えうるか否かを検討した。もし,可能であれば,ヒトの脳を対象にin vivoでセロトニン受容体の感受性の変化を捉えることが可能になるわけである。研究は動物モデルの作成とMRSの検討の2つに大きく分けて行った。動物モデルは急性,慢性の拘束ストレスと痛みのストレスを用いて検討し,5HT_2受容体過感受性の形成をもって動物モデルの完成とした。この結果,慢性の拘束ストレスおよび慢性の痛みストレスは5HT_2関連行動の増加を引き起こすことから,5HT_2受容体過感受性が形成されることが明らかとなった。また,コルチコステロンの合成阻害剤であるメチラポンがこの感受性亢進を抑制することから,そのメカニズムにグルココルチコイドが関与することが推定された。次に^<31>P-MRS測定の基礎検討を行った。5HT_2のアゴニストであるDOI刺激でPME/βが5/7のラットで増加するが,平均値には有意差は見られず,サンプル数を増やして更に検討する必要性が示唆された。しかし,アンタゴニストであるケタンセリンの前投与ではDOIに対するPME/βの増加は見られないことから,その増加は5HT_2を介するものと考えられた。モデル動物を用いた検討では,まだ例数が少なく,結論は得られなかったが,この方法が将来臨床においてin vivoで直接脳からの受容体-情報伝達系に関する情報を得ることを可能にすることが示唆された。
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