1)アルツハイマー病群の検討:剖検したアルツハイマー病例について中脳下部から橋中央部までの脳幹部の水平連続切片(ホルマリン固定、パラフィン包埋)を作成した。そこに含まれる青斑核神経細胞の数と面積を測定(ニッスル染色)するとともに、レビー小体(H-E染色)、アルツハイマー原線維変化(ボディアン染色)、グリアの出現状況(ホルツァー染色、GFAP染色)を検索した。 その結果、アルツハイマー病患者の脳幹青斑核神経細胞は対照症状群(平成4年度検討済み)に比して、極めて高度に脱落消失していた。また、レビー小体の出現は多くはなかったが、アルツハイマー原線維変化も出現頻度が高く、線維性グリアの増生も極めて高度であった。 2)臨床症状のデータ集計:正常加齢対照群の終夜睡眠ポリグラフとアルツハイマー病の終夜睡眠ポリグラフを比較したところ、アルツハイマー病群では入眠潜時の延長、深睡眠の減少、レム睡眠の異常(筋電図の混入、いわゆるREM with EMG)などが認められた。 3)まとめ:以上より、青斑核神経細胞は加齢に伴い神経細胞が減少し、それは、とくに60歳台から急に顕著となること、アルツハイマー病では年齢をほぼマッチさせた正常対照例に比べて極めて高度に減少脱落していたことがわかった。
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