青斑核神経細胞の加齢変化を知るために必要な脳標本を2年間で13例選択した。標本は年齢による変化が分かりやすいように、20歳から70歳まで幅広く選択し、神経疾患による修飾を防ぐため、神経疾患以外の疾患で死亡した症例とした。また、性差による違いを防ぐため、症例はすべて男性とした。また、アルツハイマー病例2例も解剖し同様に検索した。標本はホルマリンで固定し、中脳下端から橋中央部までを1ブロックとして取り出し、パラフィンに包埋した。その後、各症例およそ1000枚から1200枚の水平断連続切片を作成し、50枚ないし100枚ごとにニッスル染色、H-E染色、ホルツアー染色、ボディアン染色、GFAP染色、GFAP染色、K-R染色などの神経特殊染色を施した。検鏡はデジタイザーを応用したコンピューター処理により青斑核神経細胞の面積測定を中心に施行した。 (結果) 1.青斑核神経細胞は各水平断面でその数が一定せず、尾側端付近にピークを持つ分布を示した。 2.青斑核神経細胞はおおむね60歳代なかばを境に数が減少していた。 3.青斑核神経細胞面積も数と同じく60歳代なかばを過ぎた症例では縮小傾向を示した。 4.60歳代なかば以降の症例の多くにはレビ-小体やアルツハイマー原線維変化などの細胞体内封入体を有した細胞が認められた。 5.アルツハイマー病の2例では、同年代対照正常標本に比べて明らかに青斑核神経細胞が減少していた。 6.海馬体では内嗅領皮質とCAI領域で神経細胞脱落がみられた。扁桃体では基底外側核群で神経細胞脱落がみられた。 尚、現在家族性のアルツハイマー病についても同様の検索を進め、比較検討中である。
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