メタンフェタミンの中枢作用機序に関する研究-ナトリウム・ポンプと自己受容体-

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04670700
• 研究機関: 岡山大学
• 研究代表者: 庄盛 敏きよ 岡山大学, 医学部, 教授 (90033216)
• 研究分担者: 盛政 忠臣 岡山大学, 医学部, 助教授 (80093714)
• キーワード: 精神分裂病 / 覚醒剤精神病 / 病態モデル / ドパミン仮説 / シナ・プス / 伝達物質放出制御 / ナトリウム・ポンプ / 自己受容体

研究概要

覚醒剤であるメタンフェタミンの慢性投与は、ヒトでは妄想病に似た精神病症状を、また動物では行動上の感受性亢進状態を引き起こす。感受性の亢進した動物は、神経化学的に検索されてきたが、神経伝達物質のドパミンの神経終末からの放出・代謝に焦点が当てられてきた。Na^+,K^+‐ATPaseは、細胞膜におけるナトリウム・イオンやカリウム・イオンの能動輸送に関与し、膜の分極状態を調節する。また、その一部は神経終末における伝達物質放出機構に何らかの関与をしていることが推測されている。この酵素に及ぼすメタンフェタミンの影響は、余り調べられていない。
本研究においては、ウィスター系雄性ラットを用いた。メタンフェタミン投与(4mg/Kg;ip;14日間連日)し、断薬7日目に、(1)マイクロウエーブ処理後の脳を部位毎に分割した。脳部位毎に、神経伝達物質と代謝物を測定した。(2)液体窒素処理後の脳を、同様に脳部位に分割した。脳部位毎に、Na^+,K^+‐ATPase活性とこの酵素にに対する選択的なリガンドである[H3]‐ouabainの特異的結合を測定した。その結果、メタンフェタミン断薬7日後において、(1)神経伝達物質の放出代謝に変化が示され、さらに、(2)Na^+,K^+‐ATPase活性の低下と[H3]‐ouabainの特異的結合のBmax(酵素量を反映する指標)の低下が示された。これらの関連については、さらに検討を加えて行く必要があると考えられる。
特に、近年、神経終末の伝達物質含有顆粒に存在し、伝達物質の放出に直接関与するとされる、プロトン・ポンプ(ATPase)との関連についても詳細な検討を加える予定である。

研究成果

• [文献書誌] 盛政 忠臣,金行 孝雄 庄盛 敏廉: "マウスに対する覚醒剤慢性投与におけるlocomotor activityの 経時的測定一覚醒剤に対する感受性の系統差と個体差について-" Neurosciences. 18. 175-179 (1992)
• [文献書誌] Kaneyuki T,Morimasa T Shohmori T: "Effects of thiamin deficiency on neurotransmitter concentrations in the rat brain" Neurosciences. 18. 83-88 (1992)
• [文献書誌] 盛政 忠臣、金行 孝雄 河本 泰生、庄盛 敏廉: "近交系4元雑種からの攻撃性モデル動物の作成と神経伝達物質代謝の変化" 神経化学. 31(1). 600-601 (1992)
• [文献書誌] 河本 泰生,長尾 淳二, 盛政 忠臣,庄盛 敏廉: "マウスにおける攻撃性の高,低への選抜効果" Neurosciences. 18. (1993)
• [文献書誌] 長尾 淳二,盛政 忠臣, 河本 泰生,庄盛 敏廉: "抗不安薬の雄マウス攻撃行動に対する効果" Neurosciences. 18. (1993)
• [文献書誌] 盛政 忠臣,千場 純治, 金行 孝雄,庄盛 敏廉: "覚醒剤後遺症発現機構の検討 実験動物における行動感作成立と神経系発育段階との関係" Neurosciences. 18. (1993)