研究概要 |
メタンフェタミンの慢性投与は、ヒトでは妄想病に似た精神病症状を、また動物では行動上の感受性亢進状態を引き起こす。感受性の亢進した動物は、神経化学的に検索されてきたが、神経伝達物質のドパミンの神経終末からの放出・代謝に焦点が当てられてきた。Na^+,K^+-ATPaseは、細胞膜におけるナトリウム・イオンやカリウム・イオンの能動輸送に関与し、膜の分極状態を調節する。また、その一部は神経終末における伝達物質放出機構に何らかの関与をしていることが推測されている。この酵素に及ぼすメタンフェタミンの影響は、余り調べられていない。 本研究の結果から明らかにされたことは以下のとうりである。メタンフェタミン投与(4mg/kg;ip;14日間連日)し、断薬7日目に、(1)マイクロウエーブ処理後の脳を部位毎に分割した。脳部位毎に、神経伝達物質と代謝物を測定した。(2)液体窒素処理後の脳を、同様の脳部位に分割した。脳部位毎に、Na^+,K^+-ATPase活性とこの酵素に対する選択的なリガンドである[H3]-ouabainの特異的結合を測定した。その結果、メタンフェタミン断薬7日後において、(1)神経伝達物質の放出代謝に変化が示され、さらに、(2)Na^+,K^+-ATPase活性の低下と[H3]-ouabainの特異的結合のBmax(酵素量を反映する指標)の低下が示された。これらの関連については、さらに検討を加えて行く必要があると考えられる。 特に、近年、神経終末の伝達物質含有顆粒に存在し、伝達物質の放出に直接関与するとされる、プロトン・ポンプとの関連についても詳細な検討を加える必要がある。
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