神経細胞死の機序解明と予防法の開発を目的として、ラットの大脳皮質初代培養神経細胞を用いた興奮性アミノ酸(EAA)による細胞死の分析系を確立するとともに、細胞外マトリックス分子がEAAによる神経細胞死に与える影響を検討した。 1)大脳皮質初代培養神経細胞のEAAによる細胞死は培養期間よりもin vivoでの成熟日数に平行して増加し、初代培養神経細胞の細胞死が、脳の発達にともなうEAA感受性を反映するin vitroのモデルとして利用できることが示された。 2)新生児ラット脳から精製した可溶性コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)は、グルタミン酸24時間暴露による初代培養大脳皮質神経細胞の細胞死を用量依存性に防止した。 3)CSPGの防止効果はそのコア蛋白によるものであり、その糖鎖やグルタミン酸の吸着によるものではないことが示された。 4)CSPGの防止効果はEAAのNMDA受容体遮断薬MK-801と同等であり、AMPA受容体遮断薬NBQXよりも有意に強かった。 5)CSPGはグルタミン酸10分間暴露後に起こる遅発性神経細胞死に対しても広いグルタミン酸濃度の範囲で防止作用を示し、カイニン酸、NMDA、AMPAによる遅発性神経細胞死にも防止作用を示した。 6)ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)の微量測定を目的として、リポプロテインリパーゼ(LPL)と抗LPL血清を用いた酵素免疫測定法を開発した。 以上から、CSPGが脳虚血、酸素欠乏等の急性侵襲や慢性変性疾患における神経細胞死に関わっている可能性を示唆した。
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