昭和63年4月から平成5年3月までの5年間に、対馬いづはら病院を受診した初発分裂病者は37例であった。初回に受診した援助期間を見ると、一般診療科施設が24.3%、伝統的治療者が16.2%、精神科医療施設は45.9%であった。 それら初発分裂病者を初回受診援助施設で分類して生活背景(教育水準、婚姻状況、就労状況など)を比較したが、統計学的有意差を認める項目はなかった。唯一、伝統的治療者には女性が多い傾向にあった。 次に臨床特徴を比較すると、初回に電灯的治療者を訪れた分裂病者は、一般診療科や精神科を初診した分裂病者に比べ、発病年齢が有意に高かった。また、分裂病下位分類を見ると、初回に伝統的治療者を訪れた分裂病者は、全例か妄想型であった。精神科施設を初診した分裂病者は対馬島外で発病したものが有意に多く、精神科的遺伝負因は伝統的治療者・一般診療科受診群より有意に多かった。初診時の臨床精神症状は3群間に有意差はなかった。 一般診療科を初診した分裂病者と伝統的治療者を訪れた分裂病者が精神科施設を受診して治療を開始するまでの期間を比較すると、後者の方が有意に短期間であるという予想外の結果を得た。離島の対馬には30人弱の伝統的治療者がいるが、住民の伝統的治療者に対する依存度は大きく、その存在を無視しては地域医療は不可能であることが精神科医療にも当てはまることが示唆された。
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