DSM-IIIRの基準で診断された分裂病者100例に対し、1988年4月〜1992年4月の期間に行われた継続的治療を臨床的に評価した。1988年4月から始まった観察期間4年間を外来のみで経過したのは53例(A群)、入院を必要としたのは47例(B群)であった。B群はA群より教育水準は有意に高いが、就業率は低く、生活保護費受給率も高かった。この特徴は男性に顕著に現れていた。B群の精神症状や社会適応度もA群より悪かった。しかし、発病以来の臨床経過は両群間に有意差はなかった。1988年4月以前は100例の約80%が入院歴を有していたが、観察期間内の入院率は47%に低下した。B群の入院理由を検討すると、家族の治療的意欲が大きい入院希望や患者自身の短期入院希望など、精神科施設の積極的な利用が目立った。これは患者や家族がいかなる時期にいかなる治療形態を主体的に利用していくのかを、経験的に体得する過程に医療機関が積極的に係わることによって生まれてくる。つまり、外来通院医療・地域訪問リハビリテーション・入院医療の有機的治療システムの構築が成立しつつあることの成果と考える。また、交通の便が悪い離島においては、精神科医、精神科作業療法上、保健婦の三者による訪問リハビリテーションの実施が臨床的に有効であることも確認された。 17〜23%は単身生活者であったが、これまで主張されてきた「分裂病者の社会的下方移動」仮説に該当しない患者が多く、地域の風土や価値観を巧みに取り入れた生活様式をとっていた。しかし、元来家族主義的な地域が、人工過疎化と高齢化を迎えて、家族機能の衰退を示唆する所見も多く、家族支援の方法が早急に確立される必要がある。
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