研究概要 |
昨年度に引き続き,季節性感情障害における高照度光の治療的効果が光の特異的作用に基づくのかあるいは単なる非特異的効果にすぎないのかを検討するために,高,低両照度光の照射比較実験を行った/結局,さらに5例を追加し合計7例の同症患者に高照度光(3000ルクス)と低照度光(300ルクス)を交互に10日間ずつ計30日間照射し臨床効果を比較検討した.その結果,高照度光はハミルトンうつ病評価尺度で測定した重症度の有意な低下をもたらしたが,低照度光は無効であった.高照度光照射による効果と,非特異的うつ病症状またはうつ病相数との間には関連が示唆されたが,同療法に対する患者の治療前の期待度またはモーズレイ性格検査で測定した性格の関与を示唆する結果は得られなかった.以上から,同症において高照度光療法は光自体の特異的作用により臨床効果をもたらすものと考えた. 動物実験は昨年の明暗条件下の実験に加えて,あらたに恒常暗条件下における効果を明らかにした.すなわち抗うつ作用を有する2種の薬物,リチウムとイミプラミンの臨床量をラットに慢性持続投与して、行動,体温リズムにおよぼす効果を分析した.その結果,リチウムは周期を延長させたがイミプラミンはこの作用を示さなかった.位相に対しては両薬はともにこれを変更させる作用を示した.また,これらの周期,位相に対する作用には行動、体温リズム間で相違がみられた.環境の明暗サイクルを8時間後退させこれに対する再同調をみたところ,いずれの薬物もこれに対してはなんらの作用をも示さなかった.以上から,生体リズムの障害がうつ病の病態に関与していることが示唆された.
|