研究概要 |
本研究はクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の発症因子および発症に伴って変化するマウス脳タンパク質を解明することが主目的である。予定した3つの実験計画の中の1課題と新たに計画した1課題に著しい成果が得られた。(1)CJD感染マウス脳タンパク質の二次元電気泳動解析(交付申請書記載):本年度は新たに非平衡PH匂配電気泳動(NEPHGE)法を取入れ、CJD感染能が濃縮されるミクロソーム画分のタンパク質を病症因子接種から発症に至る全過程で経時的に解析した。CJD北里1株接種後4,8,15,20,23週目に一個体ずつのマウス脳からミクロソームを調製した。非接種群も同様に処理した。タンパク質の電気泳動は一次元目を等電点電気泳動およびNEPHGE、二次元目をSDS-PAGEにより行った。分離したタンパク質スポットをコンピューターで計量化し、経時的に変動するスポットを解析した。その結果、塩基性タンパク質12種の動態を以下の3群に分類することができた。Type1:対照群(C)では経時的に一定であるが接種群(I)で増加が顕著で、かつ経時的変化を示す。Type2:CとIがほぼ平衡して経時的変化を示す。Type3:CとIの間に差が無く、経時的変化も無いもの。現在、発症との関連が示唆されるType1タンパク質についてアミノ酸配列などの解析、同定を遂行中である。(2)CJD罹患妊婦臓器における発症因子の分布(交付申請書提出後実験計画に追加):本症例は世界で2例目、自然発症例としては最初である。本患者の分娩時および剖検時に採取した試料をマウス脳に接種して、発症因子の分布を調べた結果、患者臓器のほかに母乳、斉帯血および胎盤にも感染性が検出された。妊婦試料を用いた接種実験は世界で最初である。本実験結果は母体内感染および授乳感染の可能性を示唆した(New Eng.J.Med発表)。本実験に関連して、雌マウスが感染により生殖能力を失うことを明らかにした(Arch.Virol発表)。
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