研究概要 |
正常老人,男性41名,女性77名計118名を対象として頭部MRI所見の画像解析を行った。正常老人は,脳血管障害,頭部外傷,痴呆等の脳障害や罹患を認めず,高血圧などにより通院中であっても存宅で日常の生活を支障なく送っているものとした。MRI所見はT_1強調像,T_2強調像,プロトン密度像によって得られた。読影は12項目について判定基準を定めたうえで,4名の同席判定を行った。 T_2HSIは,72.9%に認められ,加齢とともに増加した。T_2HSIの出現部位は,基底核61.9, 視床39.0%,頭頂葉37.0% 側頭葉12.7%,橋8.5%であった。Lacuner infarctionは24.6%に認められ,加齢とともに増加し,基底核7.6%,視床5.9%であった。脳室周囲の高信号域(PVH)は38.1%にみとめられた。その出現率は加齢に伴って上昇した。 側脳室の拡大は,(+)51.7%,(〓)46.6%,(〓)1.7%であり,第3脳室の拡大は(+)54.2%,(〓)44.1%,(〓)1.7%であり,シリビウス裂の拡大は(-)0.8%,(+)51.7%,(〓)47.5%であり,(十)と(〓)が大部分をしめた。萎縮性の変化は,皮質の萎縮(+)48.3%,(〓)48.3%,小脳の萎縮は(+)66.9%,(〓)32.2%,脳梁の萎縮(+)42.4%,(〓)55.9%であった。また橋の萎縮(±)95.8%,鉄沈着(-)40.7%,(〓)51.7%であった。 MRI所見の相互間の関連をみると,年齢,PVHは,多くの所見と相関が高く,萎縮性変化,血管性変化の両者を反映していた。さらにMRIと同時に行われた,ベントンテストの結果をみると,lacuner infarctionが多発性になればなるほど,誤数が増え,正確数が減少し,特に歪み,大きさの誤り,左右の誤りが生ずるなど,無症候性の梗塞であっても認知機能に障害がみられることがあきらかになった。またMRI所見でT_1LSI(-),T_2HSI(-),PVH(-),ベントンテスト正確数5点以上,脳波正常者は萎縮性変化が(+)のものが多く,これは生理的範囲と考えられた。
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