研究概要 |
ストレスと生体リズムとの関係について検討することは、ストレスが発症の一つの誘因であるとされるうつ病をはじめ、ストレスによってもたらされる心身の変化をリズム障害という観点から考える上で重要な情報を与える。そこでラット行動リズムに及ぼすストレスの影響について観察を行い、更に自律振動体である視交叉上核から線維連絡を受けている青斑核(LC)部におけるノルアドレナリン(NA)ニューロン活動との関連性について検討を行った。 [方法]拘束ストレスを個々のラットのCircadian Time(CT)の6ポイント(CT2,CT6,CT10,CT14,CT18,CT22)に60分間負荷し、行動リズムの位相、周期及び行動量の変化について観察を行った。またLC部におけるラット脳内NAの主要代謝産物で、NA放出の指標である3-methoxy-4-hydroxyphenylethyleneglycol sulfate(MHPG-SO_4)含量を経時的に測定した。 [結果]ストレスによる位相変位は、CT22に最大の位相前進を示し、CT10で位相後退を示す位相反応曲線が得られた。フリーラン周期はCT6,CT10CT22,でストレス負荷前に比べ有意に延長した。次に、LC部のストレスによるNA放出はCT10及びCT22にそれぞれピークをもつ二峰性の日内変動を示した。 以上のことから、ストレスは行動リズムの位相や周期を変化させる作用を有しており、ストレスによる最大の位相の前進もしくは後退が認められる時刻に一致して、LC部のNA放出が高まることからストレスによる位相変位作用にLC部のNAニューロン活動がなんらかの影響を及ぼしている可能性が示唆された。
|