研究分担者 |
皿田 洋子 福岡大学病院, 医療技師
渡辺 大介 福岡大学, 医学部・衛生学, 助手 (20201197)
小川 厚 福岡大学, 医学部・小児科, 助手 (80248509)
満留 昭久 福岡大学, 医学部・小児科, 教授 (30038749)
瓦林 達比古 福岡大学, 医学部・産科婦人科, 助教授 (30142350)
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研究概要 |
本研究は,妊産婦が有する諸問題,産婦と新生児の間の精神医学的問題を把握することで、周産期に生じる問題に応じたリエゾン活動のモデルをさぐることである。これまでの研究成果は以下に示す通りである。 1.妊産婦の精神状態の推移;(1)不定愁訴は,妊娠初期,中期,出産後と次第に減少していく,(2)初産婦の場合は,不安が抑圧されて,行動異常,離人,転換という形の「不安代理症状」で現れやすい。 2.妊産婦の抑うつ症状 初産婦は,高いSDS得点を示すものが産前の32.2%から産後の45.9%と増加し,逆に経産婦は41.1%から24.1%と減少している。 3.産前のうつ状態と心理社会的要因との関係;本研究においては,従来いわれている夫婦関係よりも,妊産婦自身の早期の母子関係が,うつ状態発現に強く関係していることが明らかであった。 4.妊産婦の分娩時年齢と抑うつ状態;年齢が低い程(特に,ティーン・エイジャー)SDS得点が高いことが判明した。 5.産婦と母子情緒交流観察;SDS得点が高い初産婦ほど新生児への哺乳に困難が見られ,他方,哺乳時の新生児側の母親への働きかけが良い程,哺乳も順調で,母親の安心度も高いことが明らかとなった。 以上のことから,周産期での妊産婦に従来の報告より精神異常が高頻度に発現する。そのうち,特に不安,心気,神経質,抑うつへの精神科リエゾン・サービスの重要であると考えられた。また,産後の母子交流の良し悪しは,母親側の精神状態に加え実母との関係が影響すること,新生児側の母親への働きかけも大きく影響することから,母親の母性性発達の援助・母子間のかかわり合いを援助することが,小児精神医学の役割であると伴に精神科リエゾン・サービスの今後の課題であると考えられた。
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