研究概要 |
今回の我々の研究は、日本の各地域において一般世帯を対象にアルコール、タバコ、コーヒー、茶、その他精神活性物質使用者率を調査し、その各々において常用者、乱用者、依存者の精神・社会的実態を把握しようとするものである.個人ではなく世帯を対象に調査することによって、精神活性物質の使用と使用障害(常用、乱用、依存)の発生状況が明確になることが期待される.今回の調査では、都会地の傾向を見るために東京都世田谷区,郡部の傾向を把握するために岡山県内の2地区と佐賀県内での調査を計画した. 調査対象の世帯構成メンバーのうち12歳以上の者全員にKAST、修正KAST,FES簡易日本版、PBI、飲酒・喫煙・喫茶行動調査表、薬物使用行動調査表を含む 調査用紙を配布した。 今年度までに、慶応大学学生(731名、630名)、世田谷区内診療所受診者(368名)、岡山県英田群東・西粟倉村の全成人人口(1,565名)を対象にそれぞれ調査を完了したが、一部(世田谷区一般人口及び平成5年度大学新入生人口)はまだ解析途中である。 岡山県で施行した調査結果は以下のとおりであった。尚、岡山県では世帯単位でなく個人的に調査を実施した。 調査対象の56.8%が何らかの形で飲酒しており、総理府の全国調査と比較すると60才以上の女性で飲酒者の割合が低かった。飲酒量5.4合/日以上の超大量飲酒者が9.9%、KAST(久里浜式アルコール症スクリーニンング・テスト)2点以上の問題飲酒者が9.4%を占め、他地域で行われた一般人口調査と比較して著しく高かった。この結果は調査地域におけるアルコール関連問題の深刻さをうかがわせる。興味ぶかかったのは、鎮痛剤を主とする処方薬や市販薬の使用が12.7%に見られたが、特に飲酒者が少なかった女性に使用者が多く、男女間で統計学的有意差がみられた。
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