研究概要 |
本研究では、ICD-10草稿の診断基準に合致するアスペルガー症候群(AS群)(17例;平均7.2±2.3歳)について、IQ71以上の自閉症(IA群)(18例;平均7.1±3.4歳)およびAS群とIA群以外の発達水準の高い広汎性発達障害(OPDD群)(51例;平均5.1±2.0歳)との間で、臨床的変数の比較を行なった。平均IQは、AS群は98.8±18.8、IA群は85.4±9.7、OPDD群は83.5±10.3であり、3群間で有意差があり(F(2,83)=9.54,p<.001)、多重比較ではAS群が他の2群よりIQが有意に高かった。 発端児出生時の母親の平均妊娠回数は、AS群は2.3±1.5、IA群は1.3±0.6、OPDD群は1.7±0.9で、3群で有意差があり(F(2,78)=4.03,p<.05)、多重比較では、AS群がIA群より有意に後の妊娠での出生であり、OPDD群に対してもその傾向があった。しかし出産時母親年齢に有意差はなかった。平均発語月齢は、AS群は12.4±2.0、IA群は24.5±10.7、OPDD群は19.4±10.3で、3群間で有意差があり(F(2,80)=6.82,p<.005)、多重比較では、AS群が他の2群より有意に発語月齢が低かった。 初診時の対人関係の水準で、“かなり反応が乏しい"とされた者の率は、AS群は0%、OPDD群は4.2%、IA群は22.2%であり、AS群が有意に低かった。しかし多動症状、強迫的傾向および常同行動の有無については、いずれもIA群で頻度の高い傾向がみられたが、有意差はなかった。CARS-TVは計30例でのみ施行され、総得点はAS群(6例)が平均25.5±2.3、IA群(5例)が平均28.0±4.4、OPDD群(19例)が平均24.9±4.0であり、3群で有意差はなかったが、IA群で得点が高い傾向があった。 AS群は、IA群やOPDD群よりも障害の程度が軽いが、それなりの社会適応上の困難性は有している。本研究での所見は、今後さらに症例を追加して、検討する予定である。
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