研究概要 |
ICD-10草稿の診断基準に合致するアスペルガー症候群(AS群)(28例,平均6.2±2.4歳;男21,女7)について、IQ71以上の自閉症(IA群)(19例,平均7.0±3.4歳;男17,女2)およびASとIA以外の広汎性発達障害(OPDD群)(72例,平均5.4±2.7歳;男64,女8)との間で、臨床的変数の比較を行なった。平均IQは、AS群(21例)は103.5±19.2、IA群(13例)は84.8±10.0、OPDD群(64例)は86.0±11.4で、3群間で有意差があり(F(2,95)=14.2,P<.001)、Scheffeの多重比較では、AS群が他の2群よりIQが有意に高かった。 発端児出生時の母親の年齢、早期運動発達里程に有意差はなかった。平均発語月齢は、AS群(24例)は13.0±3.0、IA群(18例)は24.5±10.7、OPDD群(58例)は20.2±9.5で、3群間で有意差があり(F(2,97)=9.5,p<.001)、Scheffeの多重比較では、AS群が他の2群より有意に発語月齢が低かった。脳波異常とてんかん発作の頻度および発達障害の遺伝負因は、3群で有意差はなかった。 自閉度の尺度であるCARS-TVは計43例で施行され、総得点はAS群(12例)が平均24.8±2.9、IA群(5例)が平均28.0±4.4、OPDD群(26例)が平均25.3±3.5であり、IA群で高い傾向があったが3群で有意差はなかった。CARS-TVの15下位領域のうちで、全体的な自閉度を示す第15尺度で3群間に有意差があり(F(2,40)=3.4,p<.05)、Scheffeの多重比較ではIA群(5例)(平均2.1±0.5)がOPDD群(26例)(平均1.6±0.4)より有意に自閉度が高かったが、AS群との他の2群との間には有意差はなかった。また第1尺度(対人関係)と第2尺度(模倣行動)で、10%水準で3群間に有意差があり、いずれもIA群でOPDD群より障害が重い傾向があった。 AS群は、IA群やOPDD群よりも障害の程度は軽いが、それなりの社会適応上の困難性は有しており、症候や発達特性において、IA群よりOPDD群により近縁性がある。
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