研究概要 |
1.コンピュータグラフィックスによる乳癌組織の三次元復構 コンピュータグラフィックスを用いた乳癌の三次元復構により、乳癌が末梢乳管から発生することを明らかにした。さらにその進展様式について、末梢で発生した乳癌が連続的に、または非連続的に乳管内を進展することを示した。この結果に基づき、従来曖昧であった癌の乳管内進展の定義を「非浸潤癌巣が末梢乳管域を超え、中心乳管へ進展していること、または中心乳管域に明らかな非浸潤癌巣を認めること(intraductal spreading of carcinoma,ISC)」とした。癌の乳管内進展は乳房温存療法における再発の危険因子であることが次第に明らかになりつつあり、乳管腺葉系の構造に立脚した癌の乳管内進展の解析は極めて重要である。 2.癌遺伝子産物および癌関連抗原の発現に基づく乳管内進展病変の解析 抗c-erbB-2(HER-2/neu)抗体(pAb1)、抗MUC1抗体(DF3)、および新しい乳癌関連抗原(AM抗原)を認識すると考えられるAM-1抗体を用いて、乳管内増殖性病変におけるc-erbB-2蛋白、ならびに乳癌関連抗原(MUC-1,AM)の発現を免疫組織化学的に検討した。その結果、乳管内癌(DCIS)のみならず、異型上皮過形成(ADH)においてもMUC1およびAM抗原の発現が認められた。この結果は乳癌に併存する乳管内進展病巣が既に悪性の可能性(malignant potential)を有することを示しており、乳房温存療法における癌の乳管内進展の生物学的意義が示唆された。
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