【目的】肝・胆道・膵手術での回収式自己血輸血システムの導入を目的とし、赤血球と胆汁、膵液などの消化液との分離、癌細胞の混入の有無などについてin vitro及び臨床例で検討した。 【方法】自己血回収装置 Cell Saver及びHemoliteを用いた。in vitro実験 保存血と胆汁との混合液を生理食塩水で3段階に希釈し、3種類の試験液を作成した。これを自己血回収装置で濃縮洗浄し生成赤血球液と廃液とに分離した。臨床例:肝切除9、胆道手術2、膵頭切除5例で術中出血を自己血回収装置で回収処理した。検索項目:血球数、赤血球抵抗試験、アミラーゼ、総胆汁酸、細菌培養、病理細胞診を生成赤血球液、排液で検討。 【成績】in vitro実験:胆汁5倍、10倍希釈群では、試験液の高ビリルビン、胆汁酸値は良好に除去され正常値を示したが、胆汁1倍群ではそれらの除去が不良であった。また胆汁1倍群では血清ヘモグロビン値も高く、溶血を認めた。生成赤血球液の、赤血球膜抵抗は3群とも正常値を示した。臨床例:約1000mlの術中出血で血中ヘモグロビン値15g/dlの濃厚赤血球220mlを生成することが可能であった。膵頭切除例で生成された赤血球液では溶血高度例を認めたが、他の手術では赤血球膜抵抗も正常に保たれていた。生成赤球液中のビリルビン、胆汁酸値は全術式で正常値であるが、膵頭切除例ではアミラーゼ値が高かった。生成液中の病理細胞診では、全例でClass Iで癌細胞の混入はなかった。また細菌培養の陽性率は肝内結石での肝切除、胆管癌での胆道手術で高率であったが、肝細胞癌での肝切除術では低かった。 【結語】臨床例、特に肝細胞癌での肝切除術での生成赤血球液は自己血として使用可能と思われた。胆汁と血液との分離は本システムで可能であるが術中の胆汁混入は最小限にするか、希釈し、回収すべきである。
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