研究概要 |
神経芽腫64例のDNAに対するSouthern blottingの解析を終了し、この結果、N-myc遺伝子の増幅が従来から指摘される様に腫瘍の悪性度と密接に相関することを確認した。しかし、一才以上症例では、N-mycの増幅がなくとも予後不良例が存在する事も明かになり、N-myc以外のbiological markerの必要性が確認された。49例のRNAに対しは、Northern blottingにより、N-mycの発現を解析し次の事を明かにした。まず、N-mycの発現は遺伝子の増幅度とは必ずしも一致しないが、予後の悪いものは発現量が高い傾向にあった。また、発現の有無は神経芽腫の組織型に強く相関し、分化度の高い腫瘍や化学療法後に得られた高分化の腫瘍の検体ではN-mycの発現は殆ど認められなかった。8例のRNAに対して神経特異的src mRNAの発現をSl nuclease protection assayで解析した。その結果、1才未満症例はc-srcN1,c-srcN2 mRNAを、レチノイン酸で分化させた神経芽腫培養細胞と同程度に強く発現していた。一方、1才以上症例は、神経特異的src mRNAの発現は低レベルか同定不能であった。このパターンは、神経芽腫細胞株におけるsrc mRNAのスプライシング様式と一致しており、予後不良な進行神経芽腫がin vitroで細胞株として樹立され易い性格を持つ根拠の一つになっているものと思われる。神経特異的src mRNAの発現は、神経芽腫臨床例において腫瘍の分化能を予見するbiological markerになりうる可能性があり、引き続きSl nuclease protection assayによる解析を行い、予後との関連をretrospectiveに分析する予定である。
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