研究課題/領域番号 |
04670724
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
大沼 直躬 千葉大学, 医学部, 助教授 (50125910)
|
研究分担者 |
吉田 英生 千葉大学, 医学部・附属病院, 助手 (60210712)
田辺 政裕 千葉大学, 医学部・附属病院, 講師 (10207160)
|
キーワード | c-src遺伝子 / 神経芽腫 / alternative splicing / 神経分化 |
研究概要 |
神経芽腫細胞株を用いて前年度に明かにした神経特異的src mRNAの発現と腫瘍の分化能との関連が、実際の神経芽腫臨床例の予後にいかに反映されるかを、1988年から1992年までに治療した神経芽腫28例を対象にS1 nuclease protection assayで解析した。total RNAは全例、化学療法施行前の検体から抽出した。その結果、マススクリーニングで発見された1才未満神経芽腫症例で、全例にc-srcN1,c-srcN2 mRNAの強い発現を認めた。一方、1才以上IV期神経芽腫症例では神経特異的src mRNAの発現は低レベルか、又は同定不能であった。さらに、in vitroの分析と同様に三種類のsrc mRNAの総量に対するスプライシングの比率を求め、特にc-srcN2 mRNAの発現比率に注目した。c-srcN2 mRNAの発現比率と予後との関連を分析すると、発現比率10%を境に大きく予後が異なる事が明かになった。c-srcN2 mRNAの発現比率が10%以下の症例はいずれも進行神経芽腫であり、このうちの7例が死亡または腫瘍ありの状態であった。逆に、発現比率が11%以上の症例は年齢・病期に関わらず全例が腫瘍なしで生存していた。注目されるのは、マススクリーニングで発見された病期IIIの2例でc-srcN2 mRNAの発現比率が10%前後と低かった事である。この2例は腫瘍の局所の進展状況により、A1プロトコールを要した当教室においては例外的なケースであった。これらの症例はマススクリーニングによる高悪性度神経芽腫の早期発見例である可能性が考えられた。c-srcN2の活性化はN-myc遺伝子の増幅と逆相関の関係にあり、さらに、N-myc非増幅型の高悪性度症例の予後をも的確に示しており、神経芽腫患児の予後を予見する有用なbiological markerになりうる事が示された。
|