研究分担者 |
小見山 高士 東京大学, 医学部(病), 医員
新本 春夫 東京大学, 医学部(病), 医員
布川 雅雄 東京大学, 医学部(病), 助手
重松 宏 東京大学, 医学部(病), 助手 (40134556)
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研究概要 |
平成6年度までには虚血-再灌流障害モデルを用いて障害発生の際の種々の変化を観察していた.具体的には1)微小血管透過性(vascular permeability)亢進を中心とした細胞障害部位の確認とコンピューター画像解析による評価(その組織内での不均一分布については多くの文献で指摘されている),2)虚血-再灌流障害発生時の微小血管径の変化(PAF 単独投与によるin vivoの微小血管径の変化は既に観察済み),3)蛍光標識白血球を用いた細静脈への膠着が観察された.その結果,われわれの虚血-再灌流障害モデルでは再灌流領域に好中球の膠着が有意に増加していることが示された.また,それと同時に再灌流領域では有意な微小血管透過性の亢進も示された.しかし,虚血-再灌流障害時の血管透過性亢進はPAF antagonistの一つであるWEBでは完全に抑制することがでず,虚血-再灌流障害がmulti-pathwayからなる生体反応であることが示された.PAFの局所投与実験でPAFが細動脈のみでなく,細静脈の収縮をも引き起こすことが示された.細静脈は白血球-内皮細胞相互作用の主座であり,血管透過性が単なる炎症メディエータによる直接的反応ではなく微小循環の血行動態にも影響を受けていることが示された.以上の結果から白血球-内皮細胞相互作用に対してさらに踏み込んだ基礎的な検討を行う必要が生じたため,新たに蛍光標識好中球を実験動物に投与し,膠着好中球をex vivoで観察することで白血球-内皮細胞相互作用発生機序を探るモデルを作成し,検討を行った.このモデルでは,虚血-再灌流モデルと異なり,内皮細胞と好中球の活性化過程を分離することが可能で,これにより,再灌流障害時の好中球膠着がどのような機序(主にどちらの細胞活性化により惹起されるか)によって起きているかをさらに詳しく検討できる.好中球をFMLPもしくはLPSにより15分間刺激する条件では膠着白血球の増加は見られず,白血球-内皮細胞相互作用の主体は障害(活性化)内皮細胞によっていることが示唆された.ただし,好中球の活性化に関しては刺激時間との関係や内皮細胞をLPSなどによって単独刺激する方法でさらに詳しく検討を行う必要がある.
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