研究概要 |
阻血冷却状態にあった肝が、血流再開後、いつからどのような熱源を酸化する能力を回復するかを実験的に研究した。一晩絶食したWistarラットを対象とし、全身麻酔後、気管切開し調節呼吸とした。われわれが開発したin situ全肝冷却潅流阻血法の要点は、全肝阻血を行う際に肝下部下大静脈を右腎静脈分岐部のすぐ末梢で遮断し、門脈を直接穿刺して肝の冷却潅流を行い、その潅流液を右腎静脈を切開して回収するところにある。潅流速度は1 ml/minとし、阻血時間は30分とした。肝エネルギーバランスは燐核磁気共鳴スペクトロスコピーにより、β-ATPと無機燐(Pi)を測定し、β-ATP/Piにより評価した。全肝阻血中および血流再開後5時間にわたり生理的食塩水のみを投与したC群、血流最開直後よりfull strengthのブドウ糖を投与したG群、血流再開後1時間よりfull strcngthのブドウ糖を投与したG1群、血流再開後1時間よりhalf strcngthのブドウ糖を投与した1/2Gl群、脂肪とブドウ糖を1:1(カロリー比)としたfull strengthの輸液を直後より開始したFO群、1時間後より開始したFl群を設定した。その結果C群のラットの肝エネルギーバランス回復は良好であったが、血流再開後直ちにfull strengthの熱源(G,Gl,FO群)を投与すると基質の種類に関係なく肝エネルギーは低下しラットは死亡した。一方1/2Gl群およびFl群での肝エネルギーバランスの回復は良好でラットは生存した。すなわち阻血冷却にあった肝はエネルギーバランスが前値の60%の回復した時点よりhalf strength程度のブドウ糖か、full strenthであっても脂肪でブドウ糖のカロリー比が1:1の基質を酸化する能力を回復することが明かとなった。
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