研究概要 |
外科的感染症動物モデルを用いて、内径30nmの極小中空セルロースファイバーによる血液浄化療法の効果を検討した。まずイヌ盲腸結紮、穿刺による腹膜炎を考起し、3-5日以内に敗血症により死亡するモデルを完成した。次に、イヌを用いて長期間連続運用可能な体外血漿分離回路を作成を試みた。安定した循環動態下に、24時間の運用が可能となったため、分離血漿回路に極小中空セルロースファイバーを挿入し、その前後で血漿中のいかなる成分が除去されるかという基礎的検討を行ったところ、凝固第VIII因子の若干の低下を認める以外に,著明な変化は認めなかった。以上のような基礎的検討の上に、前記イヌ感染症モデルを用いて本装置による延命・治療効果の検討を始めたが、敗血症動物は循環動態が不安定で、現時点では24時間の連続運用は困難で延命効果も認めていない。そこで小動物のラット敗血症モデルを用いて、極小中空セルロースファイバーにより、どのような敗血症起因物質が除去できるかを検討した。イヌと同様にラット腹膜炎モデルを作成し48時間後に屠殺採血し、血漿を得た。同血漿をφ1cm×3cmの極小中空セルロースカラムを通し、エンドトキシン,血小板活性化因子(PAF)、ATIII-トロンビン複合体(TAT),プラスミン-プラスミンインヒビター複合体(PIC)の変化を測定したが、現在まで5匹を用いて行ったところ、エンドトキシンは有意に低下し、PAF,TAT,PICは減少の傾向を示した。現時点では大動物を用いての中空系セルロースカラムによる敗血症治療には成功していないが、今回の基礎的検討によりその可能性が強く示唆された。
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