研究概要 |
(1)広島県腫瘍登録からの未分化癌調査を行っているが、1974年〜1989年の間に甲状腺未分化癌II例と甲状腺扁平上皮癌I例を見出した所である。甲状腺癌全例も調べてあるので、疫学調査結果を出す予定である。 (2)甲状腺未分化癌に対して局所化学動注療法を行い、腫瘍の縮少傾向が2例で見られた。 (3)甲状腺未分化癌の免疫組爵染色を行ってきたが、分化癌にくらべて、ERは低く、C-myc p62は高い傾向がみられた。 (4)ヒト甲状腺癌の遺伝子変化を解析する目的で、過去の症例のホルマリン固定、パラフインブロックに保存された組織よりDNAを抽出し、PCR(polymerase cha in reaction)法を用いてDNAを増幅した後癌抑制遺伝子p53の変化を検討した(伊藤 敬先生)。p53遺伝子の解析は突然変異の集中しているエクソン5〜8の直接塩基配列決定法によった。分化型乳頭癌10症例では、p53遺伝子には全く突然変異は認められなかった。それに反し、未分化癌では、7症例中6症例に点突然変異を認めた。これらの点突然変異は、コドン135(TGC→TGT),141(CCC→CCT)178(CAC→GAC)。213(CGA→TGA)。248(CGG→CAG,CGG→TGG),273(CGT→TGT)であった。この突然変異のスペクトラム(718においてC:GからA:Tへの転位)は、自然発生した腫瘍に認められるp53突然変異の特徴である。これらの結果は、甲状腺分化癌から未分化癌への転化に、p53の突然変異が重要な役割を果たしていることを強く示唆する。
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