広島県腫瘍登録からの甲状腺未分化癌11例の被爆別発生頻度は、その基礎となる被爆者人口の問題がある。来年度中には報告できる予定である。 旧ソ連でのチェルノブイリ事故の汚染地域に住む子供に発生した甲状腺癌に関与する遺伝子変化を明らかにするため、癌抑制遺伝子p53、APC、MCC、Rbの不活性化とRET癌遺伝子の活性化を19例のパラフィン包埋組織を用いて検索した。癌抑制遺伝子の変化はポリメラーゼ鎖反応を用いたヘテロ接合性の消失(PCR-LOH)検出法により検索可能である。再配列によるRET癌遺伝子の活性化は逆転写PCR(RT-PCR)により検出できる。検索した全19症例の内、p53、APC、MCC、Rb遺伝子に関して各々12、18、13及び7症例より情報が得られた。しかしヘテロ接合性の消失(LOH)は1症例でのみ見られた。この症例ではp53遺伝子のLOHが乳頭癌の低分化巣でのみ観察された。一方RT-PCRで解析できた7症例中4症例は再配列によるRET癌遺伝子の活性化を有していた。RET癌遺伝子の活性化はチェルノブイリ事故の汚染地域に住む子供の甲状腺癌に特徴的な変化の1つであると考えられる。
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